「採用学」から考える新しい採用広報
3月も半ばを過ぎ、いよいよ採用活動&就職活動が本格化してきました。一方、世の中はコロナ禍に加え、ウクライナ情勢なども読めない状況となり、一層不安定さが増しています。日本においてもガソリン価格をはじめ、電気代などエネルギーに関わるコストが今後大幅に増えると予測されています。こういった情勢も見据えながらしっかりと採用・就職活動をしていきたいものです。
さて今回のブログは、前回の予告通り“新しい採用広報の考え方”について述べたいと思います。前回ブログでご紹介した、神戸大学大学院経営学研究科准教授 服部泰宏 氏著 新潮選書発行「採用学」という本を引用しながら考えていきたいと思います。
「採用学」では、メジャーリーグの話を取り上げています。まずそのあたりから触れてみたいと思います。
メジャーリーグでは、数年前から面白い現象が起きているようです(今起こっているストライキではありません)。それは“高額でハイスペックな選手を採用したチームが、必ずしも良い成績を収めているわけではない”という現象です。
近年、大谷翔平選手が活躍するエンゼルスが“二刀流”で注目されていますが、「採用学」で取り上げられているのは同じカリフォルニアに本拠地を置く「オークランド・アスレチックス」です。
このチームは、2001~2002年にかけて“お金をかけずにチームを強化した”として注目されています。2011年に映画化もされた書籍「マネー・ボール」に、そのことが詳しく書かれているようです。ちなみに映画の主演は、あの人気ハリウッド俳優のブラッド・ピットです。(筆者の子供も野球をやっていたので、家の本棚に「マネーボール」がありました。今度読んでみようと思います。)
「採用学」では、先程のアスレチックスが“データ分析に基づく新しい採用(スカウティング)”でチームを強化し、ヤンキースのような強豪と優勝争いをするような地位までのし上がった経緯が書かれています。野球が好きな方にはとても興味深く、また地方企業の採用手法にも役立つと思いますのでぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
今回はその一部分を紹介します。
アスレチックスの成功の鍵は以下の2点です。
★勘や経験ではなく、徹底的なデータ分析を行いその結果に基づいて選手採用(スカウティング)を行ったこと。
★分析したデータから、打者採用の場合「出塁率」こそが、アスレチックスにとって勝利に貢献する最も重要なファクターであることを突き止めたこと。
特にこの出塁率の中で、一番偶然性を伴わないのが「四球」、つまりフォアボールです。この“フォアボールを選ぶ選球眼”は“ストライクゾーンをコントロールできる能力”ともいえます。
つまり限られた予算の中で、“偶然性が伴わない、自分達でコントロールできる要素とは何か”を見極めたのです。こう言い換えると、企業においても活かせそうな話ですね。
それに比べてヒットやホームランは、相手投手の失投や野手の動きなどで結果が変わってくるなど、偶然性に左右されることが往々にしてある等々……これ以上は野球の話になってしまうので、ぜひ「採用学」をお読みください。
何を伝えたいかというと、“採用は科学的考証が可能なのではないか”ということです。日本と採用手法が違うという点はありますが、欧米では“採用の科学化”についての研究が進んでいるようです。
大学の学部・学科がこれまで以上に細分化されてきている今日、自社が欲しい人材が、どんな学校にいるのか、そしてどうアプローチすればマッチした人材と出会えるのかなど、科学的考証を基軸にした採用広報の手法も考えてみてはいかがでしょうか。