履修履歴面接「5つの誤解」について

なんだか急に寒くなりましたね!
紅葉もここ1~2週間で進み、すっかり秋です。


さて、前々回の記事では履修履歴面接の「5つの誤解※」について述べました。
これが本当に誤解なら、履修履歴面接を導入した場合、この「5つの誤解」とは逆の採用活動ができるということになります。
(もちろん採用活動にはさまざまな要素、例えば会社の知名度・所在する地域などがありますので一概に断定はできませんが、多くの企業は当てはまるのではないでしょうか。)
今回はなるべくその誤解を解けるよう、解説をしていきたいと思います。

※参考:大学入試センター代表辻太一朗さん著「履修履歴面接」~導入、質問、評価のすべて~ 東洋経済新報社発行

まずは「5つの誤解」と言われている項目をおさらいしましょう。

履修履歴面接「5つの誤解」とは

1.成績表活用は成績重視である。
2.履修履歴面接は勉強に興味のある学生を見つけるためである。
3.学生は授業に出ていないから、聞いても意味がない。
4.履修履歴面接を活用すると学生の不興を買う。
5.面接時間が長くなる。

今回は上記のうち、一番お伝えしたい5と4の項目について掘り下げてみます。

「5.面接時間が長くなる」

筆者はこの5つ目については、正しくは全くの逆になると思っています。
つまり履修履歴面接では「面接時間が短くなる」
もっというと「面接時間の中身が濃くなる」と考えます。

それはなぜか。
答えはひとつです。

「学生の履修履歴は全てFact(事実)だから」です。

手元に資料として履修履歴というFact(事実)があれば、それに基づいて話ができます。
いわばお互いにざっくりとした自己紹介が済んだ状態で面接がスタートできるのです。
そうすれば、面接の中で「腹の探り合い」的な話がなくなり、初手から的を絞った話ができる可能性が高くなるはずです。

たとえば、よくある例ですが
・志望動機は?
・自己PRをお願いします。
・あなたはどのような性格だと思いますか?
・長所と短所を教えて下さい。
・働くうえで大切にしたいことは何ですか?
・あなたは周囲の方からどのような人だと言われていますか?

といった質問から学生の人間像やスキルを見極めようとすることは、お互い唐突すぎるうえにとても難しいと感じませんか?(果たしてこれが対等なコミュニケーションの仕方であるのか、少々疑問にも思います)

それよりも訊かなければいけないことがもっと沢山あるはずです。

お互いについて予習が済んだ状態で、学生から手っ取り早く「何がやりたくて志望したのか」という本音を聞き出すことができれば、人事担当者も「実はウチもこんな人が欲しくて…」と本音で話ができるわけです。
その結果、面接に来た学生が「自社にマッチしているかどうか」を見極める建設的な話ができるのではないでしょうか。

そして仮に採用しなかった(されなかった)としても、「なぜ採用しなかった(されなかった)のか」という疑問に対して「企業の方向性(履修内容)とマッチしなかった」という明確な答えが残るため、お互いのその後の活動においてもプラスの経験になります。

これが「短時間で中身の濃い話ができる」と考える理由です。
次に「4.履修履歴面接を活用すると学生の不興を買う」について考えてみましょう。

「4.履修履歴面接を活用すると学生の不興を買う」

現在私がお手伝いしている、ある企業の採用面接での経験からですが、
“不興を買う”どころか“とてもポジティブ”に自分が学んできた勉強のことを話してくれます。

中には「これまでの面接では、学校で学んできたことを質問されたことはありませんでした。今日はとても楽しかったです」
と言ってくれる学生さんがいたほどです。
そういったポジティブな感想をくれる学生は比較的理系学生に多い印象ですが、文系学生でも確実に増えてきているように感じています。

ではその理由はどこにあるのか。

これも以前の記事で書きましたが、一番の理由は「大学の実学化」にあると考えています。
例えば、ある工科系大学の工学部は「基幹工学系と先進工学系」に明確に分かれています。
基幹工学とは機械・電気、化学などの従来型の学部、一方先進工学はロボティック、バイオテクノロジー、情報工学などの未来型産業に適応する学部です。

特にこういった先進工学系に進んだ学生は、就職もそれに関連した企業や仕事を選ぶ傾向が強いかと思います。
これは同じ理系でもある、看護学部の学生が看護師またはそれに近い職業選択することと同じ理屈です。

彼ら彼女らはきっと、中学生や高校生の時に「将来こんな仕事に就きたい」「これならできそう」と目的や方向性を持ちながら勉強をしてきたはずです。

そうでなければ、大学受験でこういった学部・学科を選択はしないはずです。
自分のスキルに注目されるからこそ、学生はさらに企業を知ろう、自分を知ってもらおうと話を展開できます。
そこでお互いの「マッチ度」を確かめ合うことができます。
これによる充実感から、実際にポジティブな感想が得られているのではないでしょうか。

以上のことから

履修履歴面接は、社会・産業の構造変化の観点から「時代に合わせた経営戦略」を掲げる企業ほど、導入の価値があるといえるのではないでしょうか。

スマートで有意義な採用活動につながると考えられます。

次回は
「そうは言っても、うちの会社に“ロボティック学科”の学生が来てもなぁ…」と思われる採用ご担当者と、
「自分の出身地にロボット系の会社はないしなぁ…」と思っているUターン志望の学生の皆さんに向けて記事を書きたいと思います。

来月もぜひご覧ください。