金融業にみる、業態による志向性の違いと就職先の選び方
夏も終わりに近づきました。朝晩の信州はなんとなく秋の気配を感じさせ、少し感傷的な気持ちになってきます。年齢がバレそうですが、井上陽水さんの「少年時代」とか竹内まりやさんの「September(セプテンバー)」をつい口ずさみたくなります。(同じセプテンバーでもアース・ウィンド・アンド・ファイヤーの「September」はノリノリなディスコナンバーですが、こちらも…)
さて、そんな秋風が吹き始めたこのごろ、就職&採用活動の現場はちょうど一息つく頃かと思います。もちろん「まだまだ就職活動をするよ!」という学生さんにも引き続き頑張っていただきながら、息抜き程度に読んでいただければと思います。(前回の記事はこちら)
このお盆休み中に就職活動や採用PRのことでふと思ったことがありますので、今回はそのことについて触れてみたいと思います。
就職先を選定するにあたって、「私は金融志望です」とか「安定している企業を望んでいます」など学生の皆さんは良く言われます。流石に今の世の中“安定志向だけ”を前面に出されると困ってしまいますが、採用側もそういった学生の志向にあまり違和感なく対応しているような気がしています。
ではこの安定した業種(最近はそうでもない、とも言われ始めていますが…)としてよく挙げられる“金融業”を例に考えてみましょう。少し社会経験を積むと、同じ金融の中でもいくつか業態の違いが見えてきます。
その中でも大きく色分け出来るのが銀行さんと信用金庫さんです。実はこの2つは“似て非なるもの”なのではないでしょうか。その違いは少し難しく言えば、銀行さんは“マクロ経済的”、信用金庫さんは“ミクロ経済的”な営業スタイルといえるかと思います。
銀行さんは株式会社組織であり、株主の利益が優先されます。一方の信用金庫さんは、地域の方々が利用者・会員になっている形態のため、互いに地域を繁栄させていこうという相互扶助を目的とした協同体組織になります。
取引先も、銀行さんはどちらかというと規模の大きな企業、信用金庫さんは中小企業や個人が主な相手先です。
その違いを分かりやすく説明するサイトがありました↓↓
https://www.sugamo.co.jp/recruit/about/difference.html
これは決して“どちらが良いか悪いか”ではありません。
大げさな言い方ですが銀行さんと信用金庫さんは“ミッションが違う”のです。
筆者が以前採用事業の営業をしていたときのことですが、ある部品メーカーに伺った際、社長さんがたまたま床に落ちていた部品を拾い上げ「これも○円の売上になるんだよ」と仰ったことがありました。この時はモノづくりの大切さを感じ、背筋が伸びる思いをしたことを覚えています。おそらく信用金庫さんにお勤めの方であれば、そういったさりげないやり取りから気付きや教訓を得る経験をされている方もいるのではないでしょうか。
一方銀行さんの場合は、マクロ経済的なお話をされることが多いのではないでしょうか。例えば「今日の日経平均株価」とか「アメリカの景気動向」「金利の動向」とか。こちらもとても重要なことで、筆者は個人的にもそういった話から自社の経営や営業の方向性を探ってみるということも大好きです。
ちなみに同じ金融業の証券会社では上記のようなキーワードは必須です。最近は銀行と証券の垣根が低くなっているので、銀行員の方もこういったキーワードをお話されることも多いかと思います。
このように考察すると、同じ金融業でも、求められる志向性(思考性)が違うのではないかと考えられます。銀行さんは社会情勢や統計から理論立てて行動する資質や能力、信用金庫さんはそこで働く人や顧客の感情に寄り添い物事を考える志向性が求められるように感じます。もちろんこれはどちらも専門的な金融知識があるという前提のもと、そこに上乗せされる資質の話です。
そう考えると、銀行と信用金庫、信用組合と労働金庫。銀行と証券会社など、同じ金融業界内でも様々な特性を比較することができるのではないでしょうか。
特に長野県のような地方においては、東京などと比較すると同じ業界内でも企業数が少なくなるため、金融業を同じ括りで考えがちですが、前述のような考え方を実践し“業界志向”だけではなく“自分の持つ志向性(思考性)”も判断材料として就職活動を実践してみることもアリではないでしょうか。
次回も引き続き、この話題を掘り下げていきたいと思います。