経済を知る ~グローバル化がもたらすものとは?~

9月に入りました。今年は8月末まで残暑が続き、皆さんもこの暑さに辟易とされているのではないでしょうか。また、お盆明けには「ゲリラ豪雨」が各地で発生しました。この頃よく言われることですが、一昔前と比較すると、天候の過激化が進んでいるように思います。

そして経済の世界においても、この「過激化」は進んでいるような感じがします。
今回は、そのあたりについて話をしてみたいと思います。

株価の乱高下について

2024年7月末から8月中旬にかけての株価の乱高下やそれに伴う為替の変動など、株式市場に大きな変動があったことを皆さんもニュース等でご覧になったかと思います。
個人的な感想ですが、筆者の若い頃、8月といえば経済の変動は比較的少ない月という印象がありました。特に日本では、夏になるとお盆休みなどで市場参加者が減り、相場があまり動かなくなるため、8月の株式相場は「夏枯れ相場」といわれていました。おそらく2000年代初頭くらいまでは、そのようなイメージがあります。
しかし、最近はそういったことはお構いなしに、今年のように8月でも株式市場が大きく動く現象が起こるようになりました。

具体的には、2024年8月5日の日経平均株価が1987年のブラックマンデー以来最大のマイナス4,451円という下げ幅を更新しました。今回のこのような大きな変動した理由は、

  • アメリカの金利が下がる可能性が予測されたこと(実際にその方向で金融政策がとられています)。
  • 一方日本では、日本銀行植田総裁が「日本の政策金利を上げる」と述べ、日本とアメリカの金利差が縮まり円高基調になったこと。

このあたりが、株価変動の要因の一つといえます。

その後、日本銀行の内田副総裁が「金融資本市場が不安定な状況で、利上げすることはない」と明言し、その上で、「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要がある」と述べました。つまり「日本は当面、これ以上金利は上げない」としたことで、翌8月6日の日経平均株価は3,217円の戻し相場となりました。では、なぜこのようなことが起こるのか?

その理由の一つ(あくまでも一要因として)が、「経済のグローバル化」にあるのではないでしょうか。グローバル的な視点で捉えると、お盆休みは日本の風習であって、世界は関係なく動いているということです。
もちろん昔も「アメリカが咳をすれば、日本は風邪をひく」とは言われており、アメリカの影響力が大きいことには変わりはありませんでしたが、今回のような夏場、特に日本全体がお休みムードになるお盆の時期に、こうした極端な動きはなかったように思います。グローバル経済については前回の記事で述べていますので、そちらをご覧ください。

グローバルサウスと南北問題

今回はもう一つ、今世界で課題になりつつある「グローバルサウスと南北問題」について、考えてみたいと思います。

まず「グローバルサウス」とは何か。
明確な定義はありませんが、「グローバルサウス」とは「南半球の新興国・途上国のグループ」を意味する言葉です。地球儀を見るとわかりますが、アフリカや南米大陸などの、財政が厳しく、政情・国情が不安定な途上国や新興国は南半球に多く存在しています。この国家グループをグローバルサウスと呼びます。

一方で、日本を含む経済が発達・安定している先進国は北半球に集中しています(グローバルノースとも)。近年、この南北での経済格差が様々な場面で歪みを生み始めています。これを「南北問題」といいます。
私たちの生活にも欠かすことができない原油などの地下資源は、中東から南半球に多く埋蔵されています。原油だけではなく、その他の鉱物資源やコーヒー豆などの嗜好食品も同じです。最近の円安で、ガソリンや輸入食材が値上がりし、それが物価高につながっていることは、皆さんも実生活で実感されていると思います。

過去の歴史において北半球の豊かな国家は、上記のような、中東から南半球の地下資源や嗜好品を求めて、彼らを植民地として管理をしていました。原料などの一次産品を南側諸国から安く調達する、いわば「平等でない貿易(フェアートレードではない)」により経済格差が生まれました。
しかし南半球の国々も少しずつ発展し、世界中の情報が行き届くようになったことで南北間の不公平感はより大きくなりました。経済発展や人口増加が著しい国も多く、勢いを増したグローバルサウスはG20などの国際舞台においても影響力を持ち始めています。

世界情勢と経済に興味をもとう!

さて、そんな中で私たちは、どのような考え方、生き方をすればよいのでしょうか。あくまでも筆者の考えですので押し付けることはできませんが、私は「民主主義と自由経済の法則に則った行動をしていく」ことだと考えています。そして、そのためには「知ること、学ぶこと、そして行動すること」。この3つの事柄を重視し、物事を考えていくことが重要というのが、筆者の基本的な考え方です。中でも「経済について知ること、学ぶこと」は重要だと思います。なぜ、経済がそうなったのか、なぜこういったことが起こるのか、仮説をたて検証して、行動をしていく、そのような視点で捉えてみると、これまで見えてこなかった物事が見えてくるかもしれません。

今年の秋は、日本を含む世界の情勢に大きく影響する選挙が数多く行われます。もちろん、経済面での影響も大きいはずです。日本では、近いうちに衆議院総選挙も行われることでしょう。もしかしたら、その頃には、アメリカの大統領選挙の行く方も分かってくるかもしれません。

経済とは切り離せない「政治」を見るときにも、私たちは本質を見極める考え方や、行動をしたいものです。このように、学生の皆さんも、経済について知ること、学ぶこと、そして行動することは大切であると、心に留めておきましょう。就職活動や進学を考える時にも、世の中の経済や情勢をしっかり見ておくことは重要なことです。視野を広くもち、様々な角度から見る力がつけば、予想外に面白い進路が見えてくるかもしれませんね。

次回は、今回お話した「グローバルサウス」にも、少なからず関係してくる「経済のブロック化」について、考察をしていきたいと思います。