経済を知る 〜時代に則した採用活動をするために〜
更新が一月以上空いてしまいました。この間に梅雨入りもして蒸し暑い日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
今回は「経済」というテーマで話したいと思います。経済というと「何だか難しい」と思われる方も多いでしょうが、できるだけわかりやすく書いてみたいと思います。(前回の記事はこちら)
“経済”とは?
まず「経済」という言葉ですが、語源は四字熟語で、それを略した言葉であることをご存知ですか?その四字熟語とは「経世済民」という言葉です。「経世済民」を調べてみると、以下のように記されています。
“世を経(おさ)め、民の苦しみを済(すく)うこと”
どちらかというと冷たいイメージを持つ「経済」という言葉ですが、この語源を知ると少し印象が変わりませんか?
現在一般的に使われる「経済(英語でいうところの”エコノミック”)」とは異なり、政治や行政全般などより広い範囲を指す言葉とのことで、少し温かみがある印象です。
さて、その経済をもう少し学問的に捉えると、以下の二つの学問体系に分類されます。
その二つとは、「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」といいます。最近はさらに、この二つの学問体系に「行動経済学」という考え方が加わり、この「行動経済学」というものは、近年マーケティングの側面からも注目がされている経済学の一つです。
まずは、「ミクロ経済学・マクロ経済学」について。この言葉の意味は、語感から何となく理解できる方も多いと思います。試しに「ミクロ経済学とマクロ経済学の違い」とネットで調べてみましょう。すると以下のような説明が検索されます。
ミクロ経済学は、消費者や生産者など個別の経済主体の行動に注目し、個人や企業の意思決定の問題や市場における資源配分の効率性などについて議論します。一方、マクロ経済学は経済活動の集計量(GDPや物価など)の短期および長期の変化に注目し、その国における景気循環や経済成長の問題などについて考えます。
JOSAI☆LAB(城西大学)「経済学ってどんな学問?」より引用
“国や世界レベルで捉える経済学”と“個人や企業レベルで捉える経済学”。
まあまあ、ざっくりとそんな捉え方で良いと思います。
そして、もう一つ注目の「行動経済学」ですが、こちらも簡単にインターネットで検索してみましょう。Wikipediaには、このような説明がされています。
行動経済学とは、経済学のモデル理論に心理学的に観察された事実を取り入れていく研究手法である。 行動経済学は当初は主流派経済学に対する批判的な研究として生まれたが、1990年代以降の急速な発展を経て米国では既に主流派経済学の一部として扱われるようになった。
Wikipedia「行動経済学」より引用
簡潔に説明すると“心理学と経済学を合わせた学問”です。
“行動経済学”とは?
行動経済学が活かされている場面の具体例を出してみましょう。
例えばコンビニに行くと、レジ横にちょっとした商品が置いてあるのをよく見かけます。
「100円淹れたてコーヒー」も良い例です(今は物価高でもう少し高くなっていますが)。
こうしたレジ横商品には、絶妙な仕掛けが隠されています。
まず買い物においてレジに行くときというのは、購入者はすでに必要な品物はカゴ内に揃えて、あとは会計をするだけの状態です。その時の購入者は予算に対し、概ねの支払額が頭の中で計算されていることでしょう。
その時にレジ横に手軽な商品を陳列することで、「あ、コーヒー飲みたいな」とか「肉まん、うまそうだな!」と思わせるのです。よほどお財布の紐が固くない限りは、「まあ、このくらいの金額なら、ついでに…」とつい買ってしまうことはよくありますよね。
その時々の消費者の心理状態を予測して商品を販売する。人の心理状態と合わせてお金の動きを考える。わかりやすく言うと、これが「行動経済学」です。私たちは、消費生活を営む上でこういった場面にずいぶんと遭遇しているはずです。
売る側は顧客心理を上手に利用し、統計を取り、利益率が高い商品をリピート率を高める販売手法で販売します。このとき、行動経済学の理論が活かされています。もちろん買う側も一定のお得感や満足感を求めますので、売り手はそれに応えなくては売上になりません。ですから結果的に、売り手と買い手両得の関係性が構築されます。
冒頭の「経世済民」とは、まさにこういったことを指すのかもしれません。
筆者もそれほど海外のことは知りませんが、日本の商売の仕方は、昔から(おそらく江戸時代あたりから)今に至るまで、この考え方が一貫している印象があります。
松下幸之助さん、渋沢栄一さんなどの戦前戦後の日本を代表する実業家は、こうした商売の考え方を日本全体に根付かせました。そして今日、マーケティングと呼ばれる分野においても、こうした心得が継承され続けています。こうした「経世済民」の心こそが、日本人のサービス精神の根源と言えるのではないでしょうか。そしてそれは現代において「行動経済学」としても説明がなされているように思えます。
日本人の商売人気質を表す例の一つとして、海外観光客のインバウンド需要が挙げられます。近頃、日本でたくさんの買い物をしている外国人観光客の姿が報道されていますが、SNSなどを見ても、サービスの良さや心遣いに感動している姿が多く見受けられます。加えて今は日本の物価が安いので、たくさん来ていただくことも頷けますよね(円安によるオーバーツーリズムなど、デメリットもあるようですが)。
“グローバル経済”について
さて、次は「グローバル経済」にも触れてみたいと思います。
皆さんも「グローバル経済」という言葉をよく耳にするかと思います。これは一体どういった経済なのか簡単に説明すると、「地球全体が一つの経済圏」というようなイメージです。経済を世界規模で考えると、当たり前ですが物理的な距離や通貨、税金(関税)の壁が出てきます。グローバル経済は、そういった壁を取り除いて「ヒトもモノもお金も自由に移動させよう」という経済論のことをいいます。
グローバルと似たような言葉で「インターナショナル」という言葉がありますが、あくまでも「国家間の」という意味で、国の間にボーダーラインが存在します。つまりヒトやモノ、お金が移動をするには制限があるということを表します。その制限というものの代表例としては、各国が発行する「通貨」が挙げられます。
実は厳密には、“グローバル経済論”として成立している例は無いそうですが、「経済のグローバル化」という世界の動きは目覚ましい進展をしていると言われています。グローバル化の具体例としてEU(欧州連合)が挙げられます。EUの通貨はユーロに統合されていますよね。
なぜ“経済”に関心を持つことが必要なのか?
では最後に、なぜ“経済”について興味を持つことが必要なのか、考えてみましょう。
日本も上記のような「グローバル化」の一角を担っています。そんな中で将来、経済のグローバル化がもっと加速したとします。その時に経済というものに興味を持って日常生活を営んでいなかった場合、世の中の流れに置いていかれてしまうかもしれません。
採用活動の場面においても、経済について関心がなければ、気づかない間に“古い採用観”で採用活動をしてしまい、自社で活躍できたかもしれない貴重な若手人材を見逃してしまうことにも繋がりかねません。ですから経営者や採用担当の皆様は、常に世の中の経済活動(数字だけでなく、世の中の動きとしての経済)に興味を持ち、自社の採用の方向性を見極めていくことが大切なことだと考えます。
今回は、経済学に着目して書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。
私達は常に経済活動をしながら生きています。経済に詳しくならなくとも、まずは興味をもってみることが大切です。また、「行動経済学」については、日常生活のあらゆるところで体感することができると思います。いつもより少し意識して生活をしてみると、面白いかもしれませんね。
それでは今回はこのあたりで。
次回は、今喫緊の課題として考えていかないといけない「グローバルサウス」といわれる「地球の南北格差」の問題や、米中対立、ロシアとの関係などから生じる「経済のブロック化」といった「経済のグローバル化」とは真逆の方向に向かいつつある、お話などをしたいと思います。